経営革新(改善)には手を抜くところが必要

金融機関に求められて経営改善計画を作成する際に、マネジメントの強化としてこれこれをやります、営業面ではこれこれをやります、などと現状より行動すべき項目を増やすことが多い。もちろん現状より努力が必要なのでそれはそれで不自然ではないけれど、実際には力を入れるためには力を抜くところを見つけることが肝要だ。
経営資源(ヒト、モノ、カネ、ノウハウ+時間、ネットワーク)は限られているので全方向に注力することはできない(絵に描いた餅)となってしまう。

経営改善計画は課題の抽出とその解決に向けて実行すべき行動を掲げてその成果をまとめたものではあるけれど、経営改善が計画以上にうまく行く事例は少ないように思う。いわば資金を融資できる根拠(約束)としてやりとりされている側面があるからだ。

それでは経営革新や経営改善のねらいは何か?

それは現状より生産性を挙げることだろう。前者は新たな経営資源の投入を行う場面が多いと思われるが、投入した資源以上に成果を出すこと、つまりは生産性を高めること。後者は資源の投入が難しい場面が多いと思われるが、現有の資源を活用して今以上に成果を出すこと、つまりこれも生産性を高めることが求められる。

生産性を高めるためには、資源の冗長性やゆとりが欠かせない。なぜならそれを実現するのが人である。働き方改革を求められなくてもそれは仕事をして楽しい、長く仕事を続けたいと思える風土がなければ経営革新も経営改善もおぼつかない。
そのためには新たな行動と同じかそれ以上にやめる行動を見つけ出す必要がある。


いま以上に隙間を作らなければ行動は動いていかない。だから計画を立てたものの、できない行動が出てしまう。だから経営計画には「何をやめるか」を明記しなければ実効性はないと判断できる。
いまやっていることに付け加えていくという発想から脱却しないと、真の意味での経営革新、経営改善はおぼつかない。

新型コロナウイルス感染症による経営への影響が出始めている。目先の資金繰りも心配だが、こんなときこそ、進むべき道を決めて、その方向へ進むには不要となる作業を抽出してやめていこう。

これはいまの日本の国家運営にも言えること。間接的な事務処理を省ける単純なしくみに代えていくことが生産性を挙げていく最初の一歩となる。複雑なしくみから単純なしくみへと変えていくことを躊躇してはならない(軽減税率などのしくみがどれだけ社会の生産性を下げたか)。