飲食店の感染症対策のガイドラインつくってみました

これまでの経緯を踏まえて飲食店でご参考となるガイドラインを独自に作成してみました。感染症の専門家の見解を現場に実用的に落とし込むのが狙いです。「密を避ける」などの抽象的な表現ではどうしようもないと考えて具体的な行動を例示してみました。ご参考になれば幸いです。

飲食店の感染症対策~専門家の見解を現場に落とし込む~」(PDF 322kb)

〔目的〕


飲食店は感染源になり得るとされて時短営業や集客減など苦戦が続いています。そこで科学的な知見に基づく感染症対策を行うとともに、そのことを来店客、地域、取引先などに伝える必要があります。

1.接触感染対策

接触感染対策とは、アルコールによる減菌です。手指に加えて、机、椅子など、メニューなど人の手が触れるものを含みます。

  • 入口に足踏み式のディスペンサーを設置(センサー式と違って作動が確実)
  • 店内の数カ所(手洗い、待合室、テーブルの近辺など数カ所にポンプ式を設置=場所を取る足踏み式は不要)
  • 客が入れ替わる際に机や椅子をアルコールで湿らせた布で清拭
  • 可能であれば紙のメニューだけでなくWebメニューを用意してQRコード等で誘導(発注や決済まで行えるスマートフォン用のWebアプリケーションもあり)

2.飛沫感染対策

大声の会話やくしゃみなど2メートル程度に到達する飛沫を防ぐ対策です。

  • 来店客に会話は必要最小限にとどめるよう依頼する。
  • 食事前と食事後はマスク着用を求める。
  • 1人用の席は隣席との境界に設置。2人もしくは4人用の机では前に(可能であれば隣も)仕切り板を設置。グループ間の席は最低1メートルを確保する。
  • 仕切り板は終業時に水洗いもしくはアルコールでの清拭を行う。
  • 店内のBGMは小音量として大きな声が必要ないようにする。

※ 相手の表情が見えるよう透明の仕切り板(アクリルが一般的)を設置。仕切り板の上端の高さは机の座席では床面から1.4メートル程度を確保。床に座る場合は背の高い人の頭のてっぺんと揃える髙さに設定。

※ 席間は2メートルが奨励されているが現実的には困難。その場合は1メートルの間隔を確保しつつパティションを併用。

3.空気感染対策

空気感染とは小さい4マイクロメートル未満の粒子で空気中を長く漂うため、マスクをはずす飲食店では対策が求められる。換気扇や空気清浄機よりも効果的な対策として機械吸気と排気を行う方法がある。


〔前提条件の確認〕
すべての席に人が座り、スタッフ人数と待合場所の人数を含めた最大収容人数を求める。
上記の値に30を掛けて1時間あたり必要換気量とする。


〔換気に使用する全熱交換器と風量計算について〕

三菱の全熱交換器(ロスナイ)のカタログから上記の風量を換気できる機種を選定(部屋が広いと複数台設置)。全熱交換器では自然換気と違って真夏の高温多湿や厳冬期の冷たい外気等の影響を受けにくいため快適性と省エネルギーに貢献(それ自身もエアコンのように電気を消費しない)。機械本体も高価でないため、快適と省エネルギー効果で元が取れる。ただし風量計算やダクト風量測定など空調に精通した専門業者による施工と設置が不可欠。

〔計算例〕

想定条件:最大収容人数を20人→ 1時間に600㎥の換気が必要
全熱交換器の台数:1時間に250㎥の換気能力がある全熱交換器では3台

〔設置機種・場所について〕

本体が見える露出型と天井埋め込み型があり、性能の優劣はないが、露出型は後付が容易でお客様に見えるため換気を説明しやすい利点。天井埋め込み型は天井裏にダクトを設置するもので本体とダクトを見せたくない場合に選択。

全熱交換器は吸気と排気をファンで行うためダクトを通る風量が等しくして室内の圧力を調整する必要があること、ダクトは短いほうが効率が良いこと、人が溜まるボックス席など空気が対流する箇所での換気を迅速に行いたいこと、他の空調があれば気流の干渉が起こりえること、風を人に当てないことなどを勘案して設置する必要があるため専門の空調業者に相談すること。

〔風量計算の根拠〕

新型コロナウイルス感染症対策として定量的な換気の基準はないが、ビル管理法による「換気が不十分でない状態」とされる1人1時間30㎥をクリアすることが現実的な目安とする。

  • 全熱交換器の設置(○台設置により換気能力を1時間○○㎥確保)
  • 空気清浄機の設置(HEPAフィルターを備えたもの)
  • サーキュレーター(空気が淀みがちな店奥などの換気確保が必要な場合。ただし風を人に当てない)

※空気清浄機については、換気の補完的な位置づけ。飲食店の場合、特に煙が出る業種では油煙によりフィルター性能の劣化が極端に早くなり、知らず知らずのうちにHEPAフィルターが目詰まりして効果を発揮しない可能性がある。

4.あったらいいもの、場合によっては設置を検討するもの

  •  サーモグラフィーカメラ(リモート体温測定)一定以上の体温の方に注意喚起を行うもの(現実は測定の精度や誤作動などもあって運用は困難)。
  •  Co2センサー

都市部の飲食店では二酸化炭素濃度を表示するセンサーを取りつける店舗が増えています。二酸化炭素濃度が高くないことは換気が十分に行われていることを表します。一部では義務化の動きがあるようですが、本質は換気です(小規模の飲食店ではセンサーの設置よりも換気のしくみの導入が先決です)。

5.感染症対策ができていることの周知と啓発

  • 店入り口、店内、各机での具体的な記述
  • 公式Webサイトでの独立したページによる表記(SNSは不可。今後数年は続けていく対策であり、定番情報なので他の投稿と同じ扱いにならないよう)
  • 来店客への接客時の感染症対策の説明、お願い事項の啓発など

全文はこちら。

飲食店の感染症対策~専門家の見解を現場に落とし込む~」(PDF 322kb)