飲食店の再開に向けての対策と弁当販売の留意点

徳島県内の状況に限っては、飲食店は感染症対策を適切に行えば休業しないという選択肢もあり得ると考えています。なぜなら県内由来の感染者が出ていないこともありますが、感染の本質を勉強して対策を行えば営業を続けることは可能と判断しています。

ただし従来と同じやりかたでは徳島といえども感染のリスクはあります。ここでは3つの感染経路に自店でできうる対策を実行していきます。

1.飲食業務を再開する


(1)接触感染

手に触れて手が汚染され、顔に触れることで目・鼻・口などから侵入されるもの。基本は手洗いですが、飲食店ではドアノブ、メニュー、呼び鈴、調味料、雑誌などの備品、テーブル、椅子の肘掛けが問題となります。

ウイルスは物体の表面で2~3日生存することがわかっています。そこで客が手に取る備品については撤去するか管理しうる必要最小限にします。客が手に触れる箇所は、1組ごとに50%以上の濃度のアルコールをつけて拭き取ります(鮮度の高い次亜塩素酸水でも可)。

メニューは絞りこんで張り紙、黒板で掲示するかデジタルサイネージ表示とします。調味料は撤去してもよいでしょう。呼び鈴は1組ごとに消毒します。この作業は他のお客様もそれとなく見ているので安心してもらえる行動となります。

人間が手に触れるものを非接触型にすれば良いので、長い目で見れば自動ドア、自動水栓、手をかざしてスイッチが入るセンシング装置を導入するのも方策です。

(2)飛沫感染

くしゃみなどで排出される飛沫については到達距離が2メートル程度と考えられますが、空調の流れに乗ってさらに遠くまで到達することはあり得ます。小さなカフェなどで使い勝手が良い2人掛けの机は1人で座るようにするか、アクリル板を入れるかですが、後者は小さな面積を区切ることになって現実的ではありません。感染症はコロナだけではなく今後も鳥インフルエンザなども考えられるのでここ数ヶ月だけでなく長い目で見てレイアウトを変更していく必要があります。

比較的大きなテーブルの場合はカウンター席の場合はアクリル板の設置が有効です。静電気が発生しやすいアクリル板はウイルスが付着しやすいので好都合でありますが、消毒には手袋、マスクを用意しての措置が必要となります。

アクリル板は身長180センチ程度の人が座って目の高さよりも上にあることが必要でしょう(目の高さにアクリル板の上端が来ると不快なので目の高さよりは上に設置する必要があります)。飛沫は水平より下に移動すると考えますが、気流の関係で上に行く場合があるかもしれません。受付事務やスーパーのレジと違って下は空けないことです(やりとりは行いませんから)。

アクリル板の幅については口元からの距離と飛沫の拡散する角度によりますが、多少首を動かしても遮蔽できる肩幅以上であれば機能は果たせるのではないでしょうか。これだと音の回折により反対側にも声が聞こえやすくなります(ただし食事中の会話はなるべく控えていただくのが理想です。他のお客様が気にされるでしょうから。

(3)空気感染

新型コロナウイルスは空気中でも3時間程度生存して漂うとされています(空気感染を起こすかどうかは検証が続けられています)。そのため接触感染、飛沫感染を防ぐことが主な対策であることには変わりありません。それでも空気感染リスクが皆無とは言えない以上、対策は必要と考えます。

もっとも大切なのは換気です。換気とは空気の流れをつくることです。基本は対角線上の二箇所を開けて風の通り道をつくります。特に東西に空いていると好都合です。もし窓が一箇所しかないときはどうでしょうか? その場合は窓に向けて扇風機もしくはサーキュレーターを設置して窓の外へと排気することで擬似的に風の流れを作り出します。窓がなければ強力な換気扇で強制排気するしか対策はありません。

空間除菌と称して次亜塩素酸水を加湿器に入れて蒸散させることは効果がないばかりか、身体に有害な物質を吸い込むリスクがありますので採用しないでください。

HEPAなどのフィルターを備えた空気清浄機は有効と考えます。大切なのは空間の大きさをカバーできる能力(風量)を持っていることです。高性能なフィルターを備えていても吸い込む量が小さければ無意味です。例えば、野球場で空気汚染が発生しその除去のために超微粒子まで吸い込むことができる高性能な空気清浄機を設置したとしても、おそらくは空気を無害化することはできないでしょう。性能(精度)ではなく対応面積がものを言います。構造が簡単なものは耐久性があります。うちでは静かで風量の大きな三菱製の空気清浄機が10年以上毎日稼働していますがトラブルはありません。

また、○○イオン式などによる空間除菌がメーカーによってうたわれていますが、その効果については疑問が寄せられています。空気清浄機の基本は第一に風量、次にフィルター性能です。

(4)レイアウト

小さなテーブルで2人が対向するレイアウトは1人専用とするか撤去しなければなりません。アクリルなどの間仕切りが置かれるなかでカウンター席のように隣の人と同じ方向を向きながら食事をすることが一般的となるでしょう。この流れは感染症対策として定着するのではないかと考えます。コロナだけが感染症ではなく、コロナ禍は人間の社会説に潜むリスクをあぶり出したといえるのではないでしょうか。

(5)照明

車を運転しているとコロナ禍による生活習慣の変化や不安などから苛立っている人を見かけるようになっています。感染症が長引くほどそのような人は増えてくると考えられます。

ウイルス対策に関係はありませんが、そんなときに色の力を借りて気分を落ち着かせる照明を実施してみてはいかがでしょう。色彩をほぼ無限に変更できる照明装置が数年前から比較的廉価に販売されています。それらを使って到着直後から少しずつ色を暖色系に近づけてみたり、時間帯で色温度を変えることで落ち着きや食欲増進などの効果が生まれます。雰囲気の提案で食欲も増進されて売上に貢献するかもしれません。

2.弁当・惣菜の販売

飲食店にとって実はなかなか手強いのが弁当・惣菜です。店頭で提供していたメニューをそのまま提供できるかどうか、提供できたとしても席で食べる頃においしさを提供してきたものが、数分、数十分後に食べてもらうことになります。その際には安全性を第一に、次いで風味を維持することが求められます(食中毒予防が第一)。

シンクの上に台を渡すなど対応されていると思われますが、弁当の製造には広い配膳台が必要となります。さらに時間の経過と持ち運びによる温度等による雑菌が繁殖する怖れがあるため弁当や惣菜のノウハウが不可欠です。温度と菌繁殖の関係性は再度把握しておいてください。製造環境のさらなるクリーン度が求められるのは言うまでもありません。弁当で使うにはリスクの高い食材があります。飲食のプロといえども再度勉強しておくことが必要でしょう。

弁当、惣菜での提供には大きな利点があります。カフェなどで女性グループが店内で飲食を楽しむ場面などでは1時間、場合によってはデザートや飲み物を追加しながら2時間滞在することもあります。ところが弁当や惣菜での提供は受け渡しとともに精算が終了する強みがあります。厨房、座席数、人員手配など左右されないことは、飲食店にとって売上増加と経費管理の両面で可能性の端緒を開くもの。コロナ禍であっても飲食需要(内食+中食+外食)、早い話が胃袋の大きさは変わっていません。弁当、惣菜の提供へのシフトは事業の発展に不可欠の視点となるでしょう。

売れ残りはロスとなるので情報発信は不可欠です。方法は2つあります。
ひとつは、Twitterで写真と価格、製造個数などをお知らせするもの(前日には文章だけで予告を入れます)。
もうひとつは店頭で黒板もしくはサイネージ(30インチ程度の中古の液晶ディスプレイで可)にTwitterの投稿画面を表示させることです。コピーや写真の撮り方にシズル感を盛りこむコツはあります。ご相談があれば対応いたします(面談もしくはWeb会議。いずれも有償)。

着眼点は以下のとおりです。
①弁当・惣菜に適したメニュー開発(持ち運びと盛り付け、価格)
②食べるまでの時間や温度を想定した衛生管理(購買客へのわかりやすい啓発を含む)
③鮮度を保持できるパッケージやもちかえり時間に応じた工夫
④本日のメニューを知らせてロスなく売り切る情報発信

県内のホテルが惣菜として提供している事例(阿波観光ホテル製造の弁当をスーパーキョーエイの限定店舗で販売中)

野菜を中心にタンパク質も十分で見た目の良さ重視だけでなく、一つひとつの具材の味付けと全体としての味の良さ、ご飯とのバランスも理想です。若い男性はやや物足りないかもしれませんが、1品追加すると十分でしょう。年配者や女性にとってはまったく不満がない構成です。

小売価格580円+税